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園長便り2025-05

2025.06.06

「ふれる」

園長:中村貫太郎

 

先月、千歳化石会の会長さんが化石の移動博物館を開いてくださいました。会長さんによると、通常の博物館では展示されている化石を「見る」ことはできても、「さわれる」機会はほとんどないそうです。そこで、「見るだけでは分からない重さや質感などを、実際にふれて体験してほしい」との思いから、全国の学校を回って展示を行っているとのことでした。

「百聞は一見に如かず」ということわざがありますが、「ふれる」という行為は、見るだけでは得られないさらなる情報を私たちに与えてくれます。実際に手でふれることにより、触覚情報と視覚情報が結びつき、感覚が統合されて対象物をよりよく知ることができるのです。これは特に幼児期には重要な体験であり、今回の移動博物館は子どもたちにとって非常に貴重な機会となりました。

 

また、「ふれる」という行為は、親と子どもの愛着形成にも深く関わっています。愛着とは、親子の間に築かれる心理的な絆であり、これが子どもの「心の安全基地」となります。心地よいふれ合いは、愛情ホルモンであるオキシトシンの分泌を促し、親子の絆をより強めるといわれています。しっかりとした愛着が育まれることで、子どもは外の世界に安心して目を向けられるようになり、新しいことへの挑戦にも積極的になります。このような「探索行動」を通じて、子どもはさまざまな知識や経験を自らのものとしていくのです。

今はネット環境が整い、スマートフォンやタブレットで簡単に情報を得られる時代です。しかし、どれほど視覚的に情報が豊かでも、実際に手でふれて得られる体験には代えがたい価値があります。移動博物館は私にとっても「実体験」や「ふれること」の大切さを再認識させてもらえる機会となりました。これからも、子どもたちが五感を使って学ぶことの意義を忘れずに、より豊かな学びの場を提供していければと思います。